驚愕!透明なる幻影の言語をたずねてパート2

ことばの力をたずねながら、主に近・現代詩の旅にでたい~時には道を外れながら

詩 東雲草

腐りかけの
果実の甘さが
しのぎをけずった
時代わすれの
死の勝利を、
読む

 

明治の
ストライキ節は
名古屋旭新地での
東雲楼を廃業に追いこんだ
娼妓の唄と、
知る

 

熊本説をまたいで
江東区豊洲
東雲橋をわたると
まぼろしの
東雲飛行場の跡地に
至る

 

露地から露地へ
鉢植えが
ところせましと咲き乱れていた
あれが東雲草だったか
昭和二十年代の上野の風景が
行き過ぎて

 

追憶は
蔓に絡まって
メチルアルコール
命を売った祖父だ
さりとは辛いね、
新聞の中のある人物を針でぶすぶす刺している

 

二〇一〇年の、天高く
雲がわき立つその向こうを
午後が滑り墜ちていく
白と黒の淡彩画に
とけ込んでみえにくい東雲草の
不運な棚の角度

 

去年の目安を掘り返す
東雲草のそばに
文鳥を埋め、
そのそばに四十雀も埋めた
浅い地中には
蚯蚓一匹いなかった

 

(以上)かなり前の作品です。この作品の入っている詩集があるはずです。

「最も大切な無意味」ではないかと思います。

三年前になくなった友人が好きだと云ってほめてくれた作品なので印象深く心に残っていました。その詩集から写したもの