悲鳴
はっときずくと
安楽椅子にもたれたまま
私にもどる
一瞬の闇、いかにも
甘い記憶が拭い去られるとは信じがたい
無言の時の欠落に
魅入られていた
くらくらするような喪失感に
どことなく
酔いしれていたわけではなかった
部屋の色も匂いも
かわりもなく
このまま向こう側の
見えない意味の漂流という
観念にあまえながら
見ようとする空しい意識の切迫に
切なさを滲ませて
おそらく無駄な空気感を突き抜けてく
ここにはいない人のことが
よみがえるのだろう
瞬間の
まぶしい午後のひかりのなかで
おそらく死の儀式が
ひっそりとゆきすぎるのを
みおくるために
おきあがろうとする
異色な彼の疲れ切ったゆらめきは
影もしらない
反目する安楽椅子に抱かれたままの恐怖、闇の手か?
青ざめた悲鳴が天井を走る