空所〔現代詩)
空所
住処を逐われた野の鳥は
孤の恐怖におびえ
記憶の淵で
天変地異と言う動機を
ひそかにねがう
朝は眠りの余白のなか
もう少しベッドの中でまどろんでいたい
口のないひとの言葉も、
母との日々のつながりのなかでだけ
無意味な優しさと
思いがけない凶暴性を秘めて
野末の果ての末路に惑う(…黄泉の入り口?
書くことは自分のためより
他者への幸せを願うことのほうが
遙かに多い理由などなにもない
野の鳥の囀りのような
古代人の悲鳴のかけらも
あの空に近い
立山のわずかな氷河の中に閉じこもる
言葉にならない幸運のかけらは
無音の時代の憧れを聴く
*少し前に書いた作品です。今度の詩集には加えようとおもっています。
よかったら、感想など聞かせていただくとうれしい。