現代詩作品
むろん死後にも悩みはつきまとう渡し船などはみえず幻の夏の砂浜で、誰かのよぶ声がするが水先案内の超老人もみえず現世にひきかえすわけにもいかない(誰かが石の頭で釘を打つ…この世の別れに音も凍えていたか) 比喩のようにふりかえる あなたに対するつよ…
はっときずくと安楽椅子にもたれたまま私にもどる一瞬の闇、いかにも甘い記憶が拭い去られるとは信じがたい無言の時の欠落に魅入られていたくらくらするような喪失感にどことなく酔いしれていたわけではなかった 部屋の色も匂いもかわりもなくこのまま向こう…
その影は人の重さを忠実に支え、なぞり、自らの存在は主張しないむろん、影はいのちの明暗をあばきたてること以前に見えないもののありかを焼きつけてはなさない その影があって息づいている世界の単純な仕組みはなにより悲鳴の的になりやすくあえて見ない、…
静かな驟雨 かつてのあこがれが色を失い、声を失い、歌にもならない風景の塵の山を思い描く肋骨あたりにぶらさがる食い散らかした西瓜の種で叱られた日が甦る空想のぬけがらかハンノキの幹にしがみついていた仲間たち 甦るぬけがらの熱い庭にも驟雨が通る昼…
空所 住処を逐われた野の鳥は孤の恐怖におびえ記憶の淵で天変地異と言う動機をひそかにねがう朝は眠りの余白のなかもう少しベッドの中でまどろんでいたい口のないひとの言葉も、母との日々のつながりのなかでだけ無意味な優しさと思いがけない凶暴性を秘めて…
腐りかけの果実の甘さがしのぎをけずった時代わすれの死の勝利を、読む 明治のストライキ節は名古屋旭新地での東雲楼を廃業に追いこんだ娼妓の唄と、知る 熊本説をまたいで江東区豊洲の東雲橋をわたるとまぼろしの東雲飛行場の跡地に至る 露地から露地へ鉢植…